industofu’s blog

音楽を聴きながら感想をつらつら書くチラ裏ブログです。

1) BRIGHTER DEATH NOW - Pain in Progress

前口上

TwitterなどSNSで好きな音楽の情報を集めていて思うこと。

情報が入ってくるのが速くて、さらにBandcampやらYouTubeやらいろいろな手段で試聴できてしまうので、じっくりと音楽を聴く心の余裕がない!

そんなことないよ、という人もいるかもしれないが、少なくとも私は、新たに入手した音源を消化しきれていない感を残したまままた別の音源に興味を持ち目移りしてしまう、ということを繰り返している気がする。ジャケットやブックレットを隅々まで眺めたり、アーティストのインタビューを暗記してしまうくらい読み込んだりすることも減ったと思う。

…というわけで、すごく月並みな気がするのだけれど、ブログ記事として文章化することを通じて、落ち着いてゆっくりと音源を聴く機会を作りたいなと思った次第。

さて、記念すべき1作目は何にしようか…なんていうことを考えたり、何かテーマを設定したりしていると早晩めんどうになるのが目に見えているので、そのとき聴きたいもの、何となく手にとったもの、を取り上げていくことにする。ジャンル分けとかは後でタグつければいいんだし。

BRIGHTER DEATH NOW - Pain in Progress

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Label: Cold Meat Industry - CMI.59
Format: CD, Album
Released: 1998

で、今日手に取ったのはこれ。記念すべき1作目とか考えないとか言いつつも、やはり思い入れのあるものを取り上げたくなってしまい、最初に頭に浮かんだのがBRIGHTER DEATH NOW。作品でいうとこれよりMay All Be Deadのほうが好きだけど、最初にこっちが見つかったので。

Discogsの情報によると、1-8曲目がBomb the Daynursery名義で1988年に発表された同名のカセットの音源で、9曲目以降にコンピ収録曲やら未発表曲やらを収録しているとのこと。ただしカセットのトラックリストには8曲目の"Bloodshower"が見当たらない。CDのクレジットには"1-7 recorded 1988, originally released as CMI-03"と書いてあるし、正しくは7曲目までがカセットの音源なのかな。9曲目以降も若干ややこしいので、分かる範囲でオリジナルの出所をメモっておく。なお、Discogsでは下記のようになっているが、Wikipediaだと「後半の7曲はBrighter Death Now名義で出した同タイトルのカセット」とされている。

1. Shatterer of Earth --> カセットA1
2. Pain in Progress --> カセットA2
3. Certified Dead --> カセットA3
4. Dachau - Anthem --> カセットB1
5. Still Murder --> カセットB2
6. Meat Processing --> カセットB3
7. Heart of Stone --> B4
8. Bloodshower --> 不明
9. Bloodsex & Murders --> 1989年のカセットTemp Tations B3
10. Serapeum --> 1990年のコンピLP Projekt Neue Ordnung
11. Maruta Komand --> 未発表曲
12. Blood on the Sheets --> Temp Tations B4
13. DeathKomh. --> LP版A4に収録
14. Meat Improvement --> コンピVHS Debauch、LP版B5にも収録

本編のカセットが1988年作なので、BDNの最初期の音と言っていいのだろう。Meat Processing (Meat Improvement)やTescoのコンピに提供されたSerapeumのように、これ以降のデス・インダストリアルなサウンドにつながっていくような曲もあるが、全体としてはThrobbing Gristle的な古典的インダストリアルの色合いがまだかなり強い印象がある。

1. Shatterer of Earth

眼の前が灰色になるような無機質なノイズが、微妙に波形を変えながら最後まで続く。1曲目にこれっていうのが私は痺れる。

2. Pain in Progress

低めのドローンと繰り返される打撃音にうっすらとフィードバックが被さるような感じの、ややアンビエント風味な暗いインダストリアル。

3. Certified Death

金属的な打撃音が今度は奥のほうで不鮮明に響き、空間を埋め尽くすような音量ではなく隙間を残すかのように、ディレイをかけた感じのドローンが漂ってくる。人声も入るがあくまで控えめ。それがかえって、聴いていてぞくぞくするような効果をもたらしている。

4. Dachau - Anthem

軽く摩擦を含むような金属風の打撃音が繰り返されるのがとても工場的。カセット版だとこれがB1で、A面もB面も暗く抑揚なく音が流れていく古典的インダストリアルで始まっている。

5. Still Murder

低い音でゴモゴモ蠢くようなノイズが全体を支配するダークな曲。1-2曲目の流れがA面とB面でちょっと似ている。

6. Meat Processing

ここまでの曲に比べると打撃音がずっと攻撃的・金属的になり、細かくパーカッシヴに入ってくるノイズと相まって、タイトルが示すように肉が切り刻まれるような、いやーな感じを醸し出す佳曲。

7. Heart of Stone

全面にフィーチャーされる女性の話し声は、パゾリーニ『ソドムの市』からのサンプリング。それに不穏なピアノが絡む猟奇的な曲で、ここまでの正統派インダストリアルな曲とは雰囲気が違ってやや浮いている。

8. Bloodshower

べったり地を這うような低音ドローンを基調とした、Throbbing Gristle直系という感じの退廃的なインダストリアル。 

9. Bloodsex & Murders

反復されるリズムに低音でゴモゴモいうノイズと何かが軋むような、あるいは管楽器のサンプルのようにも聞こえる音が絡む、他の曲に比べると若干リズミカルな趣きのある曲。 

10. Serapeum

ピッチを変えながら垂れ流されるようなドローンに金属音や人声が被さって、短いながらもTG影響下の古典的インダストリアルから後の作品で聴かれるデス・インダストリアルな方向へ抜けようとしている感のある曲。 

11. Maruta Komand

未発表曲らしいが、本編に入っていても違和感なかったであろう、人声のサンプルを全面にフィーチャーしたインダストリアル。ちなみに、Mz.412 - Legion Ultraへの参加から生まれたJohn Hull (Interlock)とAndi PenguinのユニットMaruta Kommandは、この曲から名前をとったらしい

12. Blood on the Sheets

本編2曲目や5曲目で聴かれるようなゴモゴモ・ノイズ系の曲をより攻撃的にした感じで、ノイズ度高めで圧迫してくる曲。

13. DeathKomh.

前曲に続いてノイズ度高め、機関銃の銃声を変調させたかのようなマッシヴなノイズが反復される攻撃的な、それでいて殺伐とした雰囲気がかっこいい佳曲。

14. Meat Improvement

本編6曲目のMeat Processingのビデオバージョン、ということなのだと思う(LP版では6曲目のタイトルもMeat Improvementになっている)。こっちのバージョンのほうがややエッジの立った音になっている気がする。